500文字の心臓

トップ > タイトル競作 > 作品一覧 > 第02回:


短さは蝶だ。短さは未来だ。

 鏡よりも静まった湖に、月がほっこり浮いていた。
 岸に転がる石はどれも平たく、よく水を切り、湖面を規則正しくどこまでも跳ねる。月に当たると、カァンと鋭利な音を響かせた。ところが何度もやるうち、だんだん音は鈍くなり、石も小気味よく跳ねなくなった。
 水面をふぅふぅ吹いて、波紋を広げる。ゆっくりと月は流れていき、あちらの岸に近づいた。回りこみ、落ちていた枝でたぐりよせる。しぼんだ風船のように、水を滴らせたが、広げてみるときれいな円だった。
 ぷうと息を吹き込む。月はまん丸く、球体になった。叩いてみると硬い。これで元通り。空に投げようと、腕を振り回す。
「おいおい、待ちな」
 どこからか声がした。
「そのまま返すわけじゃあるめえな。遊ぶのは勝手だが、妙な形で戻されたら困るんだよ。もう飽きたな? じゃ、持ってくぞ」
 どこからか針が現われて、月をぷつんと刺した。破裂。
 どこからか伸びてきた手が、それを空にぺたんと貼りつけた。
「べつに空気が抜けて落ちたわけじゃねえんだ。はがれただけさ」
 どこからか現われたアイロンが、月に押しつけられる。
 いつも見る丸い、じゃなくて、円い月になった。



 ラムネ瓶のなかの玉に字が書いてあって、その文字が食道を滑り落ちる時ののどごしが堪らない。何か意味があるらしいのだがくもりガラスなので判らずもどかしい。眼を細めると読めると聞いたが結局まぶたが攣っただけ。ラムネ特有の角度で傾けるだけではダメで微妙な吸い加減が難しく、吐き出しても外気に触れると瞬時に蒸発してしまう。瓶を振ってから覗くと一瞬何かが見えるのだが何度やっても判読できない。思いあまって叩きつけたが玉まで粉々で、いったんは諦めるのだが喉元過ぎればなんとやら。口コミで堕落な書体の「丸」の字六つ、と聞いたのだがウワサは急に立ち消えた。かわりに流れたウワサでは賞味期限の刻印ということだがラムネ自体のそれは瓶の底に貼ってある。飲む人間の期限らしいが切れるとどうなるのか、誰も知らない。



マルコポーロの東の彼方のジパングの光の話しに誘われて
ガリレオの世界は丸くて回ってるそんな言葉を信じつつ、
コロンブスが東を目指して西に行く。
バスコダガマは、初めて世界が丸いこと明かしてみせた男だよ
でも本当に丸いことその目で見たのはガガーリン
地球は青いと言う前にきっと思ったことだろう
「地球は本とに丸かった」

今も昔も未来も丸い、丸い地球は何故丸い
丸いからこそ自転が起きて
丸いからこそ引力生まれ
丸いからこそ包まれて空気と水に守られる
丸いからこそ様々な貴い命産まれいで

生老病死はどうどうめぐりの丸の中
喜怒哀楽もどうどうめぐりの丸の中
恨みも感謝もどうどうめぐりの丸の中
苦しみ憎しみどうどうめぐりの丸の中
悟りも迷いもどうどうめぐりの丸の中
菩薩も衆生もどうどうめぐりの丸の中

丸は命の始めと終わり
丸は縁の始めと終わり
いつかはきっと丸の外



子狸ぽん太は今夕もおっとうの酒を買うために徳利をぶら下げて、ふもとの庄助の店に出かけた。途中長老の家の前にある団栗の葉を一枚頂戴して、ヒュヒュ−ンと酒代に変えた。
今日のふもとは賑やかであった。笛や太鼓の音も聞こえる。ぽん太は腹鼓を打ちながら軽やかに下っていった。
庄助は機嫌がよかった。ホイおまけと小銭を返してくれた。いつもなら直ぐお山に帰るぽん太の手に今日は小銭が握られている。村祭りの夜店が珍しい。美味そうな大福を買った。かぶりつこうとした瞬間、野良犬がワンと吠えた。びっくりした途端徳利が落ちた。しまったと気が動転した隙に大福は野良が咥え、酒は地球が飲んでしまった。
ぽん太すっかりしょげて山道を上りながら、庄助を恨む心が静まらなかった。今日に限っておまけなんかしなかったら、真っ直ぐうちに帰ったのに。大福が美味いぞえと勧めた爺にも腹が立った。それにしても収まらぬはあの痩せ犬だ。あの盗人野郎がせっかくの楽しみを台無しにしてくれた。

家が近づくにつれて、ぽん太すっかり神妙になってきた。楽しみに待っているおっとうに何といえばいいんだろう。



蛇は、満月に憧れる。



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商船三井客船 (MOPAS)オフィシャル・サイト にっぽん丸・ふじ丸のクルーズ情報



君、丸いね。
ありがとう。あなただって、すごく丸い。
彼らは円を描くように近づいていき、互いの体にそっと触れた。

次のシーンではもう、2人のからだは、あらぬ方向にはじき飛ばされている。

彼らはそもそも丸などではなく、高速で回転する三角と四角だったのだ。



「昔、中国の南泉禅師がな、旅の途中で地べたにこんな風な大きな円を書いてな、さあ宇宙絶対の真理について一句言え!と連れの僧にのたもうたそうじゃ。おい、お前ならどう言うか。ひとこと言うてみい」
吾作は突然のことに言葉が出ない。
「ちょっと、しょんべんして来る」
と林の木陰に入って行った。

直ぐ近くで、うぐいすの声を聞きながら、チンチンを引っ張り出し、勢いよく始めた先には、すみれの花が可愛く踊っていた。

終わって帰ってきた吾作が一句
「廓然無聖(ああさっぱりした)」



「皇子、待ってください。この河勝、いささか年老いてござる。」

「河勝 ゆっくり参ればよい。私はこの眼で見てみたいのじゃ。
 日出づる国の証を。」

「位奈部 お前もゆっくり参れ。」

「嫌です。私も、皇子と一緒に見てみたい、日出づる国の証とやらを。待って下され。」

「もう 時がない。急がねばならん、ちゃんとついてくるのだぞ。」

夜明けが来る。
二見の浦の夫婦岩が霞むような薄明かりの中にその姿を現したとき、3人は言葉を失い、ただ一点を見ていた。

それは、始めは赤に染まり、ついで朱に、そして眩く輝き、
見ている3人を黄金色に染めた。

若き皇子が、幼き位奈部が、そして河勝までもが、流れ出る
大粒の涙で霞んでいるであろうその一点を見つめていた。



丸い真珠のような心を持った国
この国へは悪い人や卑劣な人は入ってきてはならない
タバコを吸ってはならない。酒を飲んではならない
人に有害な農薬を禁止する。着色剤、添加物を禁止する
人をだますというようなことは、この国ではありえない
清らかな心をしていない人はこの国へは入れない
普通の人がこの国の住人になりたければ、
2年間ほど厳しい修業をし、丸い真珠のような心にならなければならない
誰もが神のような心である
この国の人間は平均して10才、普通の国の人間より長生きできる
汚れた国に住みづらい善人は、この国の住人になりなさい



イチゴとパインアップルが彼の好物だ。わたしはスーパーでちょっと高価な買い物をしてドキドキしている。百円ショップでそろえた調理道具で、懐かしい母の味に挑戦してみようと思う。牛乳をゴクゴク、っと飲んで、準備開始だ。
耳の奥から小人が「がんばって」、と囁いてくれている。窓も雲もキラキラと輝いていて、エプロンなんかむちゃくちゃにひき破いてしまいたくなる。彼がかえってきたら、真っ白なケーキを食べさせてあげよう。あーん、とお口をひらいた彼と、ぽっぽろけなわたし・・そういえば、月に帰るのはいつだっけ?



「西へ向かってどこまでも進んでゆけば、やがて元の所に還って参ります」
コロンブスがイサベラ女王に地球が丸であることを実証したいと進言した時、そうは言ったけれど、もしかしたら果てのない航海に終わるかもしれないという危惧がよぎった。これまでの体験から大海原の広大さが身に染み付いていた。
「名月を取ってくれよと泣く子かな」と一茶が詠んだとき、一茶の心はかぐや姫の住む神聖犯しがたいパラダイスとしての月を見ていた。
科学の発達によって、地球は宇宙船地球号という、小さくて壊れやすい乗り物に姿を変え、その中で人類がいがみ合い、ひしめき合っているイメ−ジに変わってしまった。月の正体も暴いてみれば無機質の塊でしかなかった。この勢いで宇宙の神秘が解明され続ければ、お釈迦様でも回答を躊躇われた「人間の魂は死後存在するかしないか」「宇宙は有限か無限か」という命題もやがて黒白の付く日がくるかもしれない。知らぬが仏というけれど、不幸にして人間がそこまで知ってしまったら、その時こそ人間はこの世での生存の意義を失うことになるだろう。宇宙船地球号は軌道を外れ、異次元の暗黒世界を彷徨い続けることになるような気がする。



 先生は白いチョークで書いた大きい丸を丸だって言ったけどじゃチョークで書かれてないその丸の中身は丸じゃないのかなあだってチョークが書かれてなくてもその中身は丸いよ。でも中身も丸だったらチョークで書いた丸の中に四角とか三角とかを書いたらもうその中身は丸じゃなくなっちゃうのかなあ。先生に聞いたら「丸は丸だから良いの」とか言ってもう違う話をしていてきっと僕が嫌いなんだ。
 先生の中身に先生じゃないものを書くともう先生は先生じゃなくなるから先生を消しちゃおうと先生の中にお星さまとかヒトカゲを書いてみたけどやっぱり先生は先生ででぶっとお尻を振りながら黒板を引っ掻いてて、何か恥ずかしくて僕は額にある丸を両手で隠すんだけど皆もう知っているんだよなあ。



イギリス人が僕の肩をたたいた。中年の男は、指先をじっと見つめて動かなかった。列車の出発する時刻である。ホームにはたくさんの人がいたし、憂鬱なイタリアの太陽とも告別する〈べき〉時だった。シェイクスピアは人間の行動には潮時がある、と言った。トーマス・カーライルは不信の正体を見破っていた。僕は、バーナード・バルークのように自分に誇りを持っていた。太陽は克明に輝きを失っている。同性愛者の男性は、僕を、仲間の待つ車両に導いた。おそかれはやかれ、僕はこの列車に乗る運命だったのだ。発車の時刻が近づく。急ぎ足で駆け込む人々、僕は、静かに瞼を閉じる。さきほどの夕陽が眼禍に焼きついて、出血したような痛みをともなっている。遠い風景がぐるぐると僕の周囲を巡り、出発した地点すらわからなくなっている。ステュワードによって、コースターがさしだされた。僕は、序々に輪郭のなくなってゆく氷の表面に、かわりつつある自分と、過去の自分との両方を見出せる気がした。そう、思った瞬間、列車は長いトンネルに突入した。



日の当たる縁側にうずくまっているこの男が、かつて鬼専務として社内の隅々にまで威光を轟かせ、新進気鋭の部下の多くを塵屑のように抹殺していった人間のなれの果てか。私も彼との出会いによって運命を曲げられた一人である。私が同期入社のトップを切って出世街道を走り続け、総合管理部長として彼の配下に入った時は、油の乗った46歳、全生命を仕事に賭けていた。あと一年がんばれば役員になれる。しかし業績の不振を全て私の所為にされ毎日のように嬲られて、倒れて病院に運ばれたのは私の方であった。その後、彼は専務にまで上り、私は退院後、定年までを窓際で過ごした。

今の彼にとって縁側が安住の地という訳でもない。その朝も早くから妻の罵声に追い立てられて、やっとそこまで落ち延びて来たという方が正しい。さてこれから何を始めるかという当てもないことがこの男にとっては二重の苦しみであった。それでも椿の蕾が開き始めた時には少し気持ちが動いた。艶やかな花の一つ一つに昔親しんだ女の顔が浮かんだ。
大輪がボソッボソッと落ち始めると、彼の心は重くなった。
花がすっかり枝から落ちた時、男の姿は消えて、丸い石だけが残ったという。



少年は意識を取り戻した。体の節々が痛んだが、その痛みが戦いの記憶を甦らせた。
少年は周囲を見渡した。そして、そこが敵の集落の中であることに気付いたとき、逃げなければ、その思いが少年の体と心を駆けめぐった。少年は立ち上がり、ただひたすらに走り続けた。
しかし焦りと痛みで、少年は体を締め付ける縄に気付かなかった。常に等距離で聞こえ続ける木のこすれる音にも。
少年は力尽きた。そして残った足跡は、有史以来、地上に刻み込まれたもっとも円に近い丸となった。



僕が少年の頃、どの町にもおもろいおっちゃんがいた。僕の町内にはくーおっさんというのがいた。裏通りのどこかはっきりしない所に住んでいた。背が低く蟹股でひょいひょいと歩いていた。
学校から帰ると、皆が集まり、く−おっさんをからかいに行く。初めは仏さんのような顔をしているが、僕たちが「一寸法師!」、「乞食!」などとちょっかいをかけると途端に「うおー」と両手を上げ、口を丸く大きく開けて喰いつく格好で襲ってくる。「わあー」と僕たちは逃げ出す。誰も喰われたものはいなかったが、どこまでも追ってくるので半分怖く、半分面白く、川原で野球を始める前のウオ−ミングアップ代わりによくからかいに行った。
となりの町内にはホ−ネンさんや進駐軍爺などというおもろいおっちゃんもいた。あのおっちゃんたち仕事をしているふうはなかったけど社会保障もない時代どうして食っていたんだろう。家族もいなかったように思う。でもいつも僕らの相手をしてくれた。今では裏通りまで舗装されて、建物はきれいになったけどおっちゃんたちのいなくなった町は寂しい。



 羽根さえつくことが出来ないから顔腕指脚胸陰部にまでバツが描かれている。子供の頃から躓いてばかりだった。朱色の墨汁に憧れていた。美しい先生は筆につけすぎるから半紙にポタリと落ちる度に息をのんだ。誰かの整った文字には花つきで二重にも三重にも丸をつける。自分の番がきて先生の顔も見れずに差し出すといつも「ハネに思い切りがたりないね」と上書きされた。
 先生の長いまつげを思い出してしまったのはこんな所に立っているせいだ。見下ろす地上では大勢の人がマットを広げている。なんて大きな○なんだろう。先生は今でも綺麗だろうか。あの丸のなかに収まることができたら花をつけてくれるだろうか。ねぇ先生、僕にだって丸をつけてもらう権利あった筈だよね。
 目を閉じたら太陽の輪郭が瞼に焼き付いた。「グズグズしないでよ」という声に背中を押され丸にむかって頭から落ちていく。



 配達が終る頃には軽くなるペダル
自転車のカゴに汗にぬれた帽子をつっこんだ
 暗闇に割り込む光は換気扇の窓からの灯り
あの灯りの向こうには幸せな家庭があるのだろう
 走りながらポストに新聞を押し込む
ぼんやりと将来の事を考えながら
 陽が昇ってきた また帽子をかぶる
お陽様はすべてを見えなくする 



「会社を辞めて気になってた事があるんだ。あのお局様はどうなった? まだ、ただのハイミスと言われないように、バリバリ仕事してるのか? あいつ、客の前ではいい顔して、いい仕事するくせに、俺らには口調は冷たいし、笑わないし、ヒステリーだし、嫌味だし、忘年会にも来ないぐらい付き合い悪いし・・・とにかく裏表の激しい性格に、よく腹が立ったよ。形に例えたら、三角だな。角ばっかりで丸みがない。男っ気がないと、ああなるもんかねぇ」
「あいつ、2年前に寿退社したぞ」
「本当かよ?! あんな性格でも結婚できるんだなぁ。でも、顔とスタイルだけは、すごくいい女だったよなぁ。性格は嫌いだけど、俺、一発お願いしたかったもん」
「それがさ。この間、偶然会ったら、すごく太ってたんだよ。たった2年で、そんなに太れるものか? って思うぐらいに、丸々と!!」
「へぇ。性格も悪い上、デブなんて最悪じゃないか。もう、離婚の危機だな」
「それがさ・・・夫婦円満で幸せなんだってさ。旦那がいい奴なんだろうな。あいつ、変わったよ、ほんと。あいつから話し掛けてきてさ。笑顔でよくしゃべるし・・・性格まで丸くなってたよ」



「結婚しないの?」
 夕食を終えて一息ついたところで母親が口を開いた。
「またそれ?しないよ。第一相手がいないって」
「そんなこといって、あんたもう25でしょ」
 最近よく出るこの話題。母親の言いたいことはわかっている。
「あんたが早く家を出てくれたら、お父さんとふたりでのんびりできるのに」
「やだよ、あたしこの家好きだもん」
「あんたねえ、ちゃんと自分の立場わきまえなさいよ」
 そういいながら、母親は紙とペンを取り出して何かを書き始めた。
「今のあんたは、こうよ」
 ずいっと目の前に見せられた紙には、丸が書かれていた。二重丸だ。大きな丸の中心に、小さな丸が書かれている。
「こうじゃなくて」
 そういいながら、母親はまた新たに何かを書き足した。
「早くこうなってちょうだいよ」
 今度は、離れたところに二つの丸。
 母親の言いたいことはわかっている。しかし、こちらも負けてはいない。
「言っておくけど、もし結婚したとしてもあたしはこうだからね」
 母親の手からペンを奪うと、二つの丸を互いに半分だぶらせて書いてやった。
「あんたって子は……いつまでパラサイトするつもりなの」
 呆れる母親に、笑って答える。
「たぶん、死ぬまでじゃない?」



【問】下の各文章を並び替えて補い、必要なら取捨選択して、
 超短編『丸』を完成させなさい。

(1)彼らの仕事はおもにテストの採点であるが、職務上の制限からか教師達には蔑まれている。仕事は短期に集中し、時期を外れるとまったく無い。そこで腕を落とさぬよう彼らは砂地に練習する。だからよく公園の隅でしゃがんでいる。

(2)ご近所のクロはよく吠える犬だったが、最近すっかり丸くなった。ご亭主に似たのね、と陰口をたたくと耳がぴくぴくする。

(3)テストの採点で、○を書いたつもりが〆に、×を書いたつもりが〆になってしまう。よくそれで点を間違える。なぜ正解がマルで不正解がバツなのであろうか。

(4)丸さんは磊落で優しい人だ。丸さんは汗かきでいつも大汗をかきながら、それでも袖をまくろうとはしない。丸さんには小指がない。

(5)丸職と呼ばれる職人がいて、ひたすら丸を書き続けている。フリーハンドで円を書くことを終生の目標にしている。しかし誰もがついに真円には至らない。だがそこが良いと彼らは言う。

(6)長袖を汗で濡らして、丸さんは終日練習している。日が暮れるころ帰途につく。ときおり足元でクロがくるくる回る。丸さんはクロの動きに眼を細める。

(7)やがてこぼれる、満面の笑み。



 その画学生の目の前には、一人のヌードモデルがポーズをとっている。
 桜の花びらがあちらこちらでふぶきはじめる頃、街の小さなアトリエで、数人の大人たちに混じり、その十代の画学生はひとり赤い顔をしている。今度の展覧会に向けて、この写生会に参加する事になったのだ。未だ女を抱いたことのない少年にとって、全裸の女体を見るのは、さぞかし刺激が強いことだろう。
 その画学生は意を決してキャンバスに向い、おもむろに絵筆を動かし始めるのだが、しばらくは緊張して思うように描けない様子だ。
 だが、そんな悩み多き画学生は、人一倍大きな”美”への探究心を秘めている。加えて彼の天才的な表現力は、後の大家を予感させるに難くないものだ。もはや、その目つき、その手の動きは、忘我の画人と化している。彼にはわかっている。裸婦の、たおやかなイメージを定着させるのに、最も適した形を。



とい1.まるいものを5つさがしてかきましょう。
(おもち)(りんご)(ひまわり)(おひさま)(おっぱい)
先生は、ガンちゃんの答案用紙に大きな花丸をあげました。



「まず、先日のテストの解答を配る。青木、井上・・・」
 教卓の前に、あいうえお順の行列ができた。
 アキは一番最後に席を立つ。
 「渡瀬」
 「はい」
 最後尾の利点は、後ろから覗き込まれる心配がないこと。でも、今日はそれが少し残念だ。数学、はじめて百点だった。
 でも・・・。右上隅にアンダーライン付きで100と書かれた答案用紙には、何かが欠けていた。二つに折った答案用紙を両手で閉じるように持ったまま、隣席のナオキの答案を盗み見る。敵はすぐにアキの視線に気付き、自分の答案をかばった。右上隅を握りしめている。
 そんなことしても遅いのだ。もう見てしまった。ナオキの答案用紙を飾る赤い鮮やかな丸やバツを。
 「そっか」
 欠けていたのは、その赤い書き込みだった。アキの答案は白黒で、赤いバツはもちろん丸さえ見えない。知らなかった。先生が満点の解答に書き込みをしないのは、面倒だから?それとも主義?
 鼻がツンと痛くなって、アキは自分が泣きそうなのに気付いた。なんだか寂しい。
 「馬鹿みたい」
 何かを誤魔化すようにペンケースから赤ペンを取り出すと、アキは全ての解答に一つ一つ丁寧に赤い丸をつけていった。



○印がどの欄についているかなどということで、人間の価値が決まるものでもない。そのことはよく分かっている積りである。
しかし、今目の前で、得意そうに渡してくれた我が子の成績表を見て、複雑な気持ちになった。
彼にはまだ○のついている位置の意味がわかっていないらしい。
「よく出来る」より
  「もう少し」や「がんばろう」の響きが性に合っているらしい。
おれの目をじっと見上げている我が息子になんと言ってやろうか。

真面目なサラリーマンを務めるのもつらいが、頼りになるおやじになることも楽ではない。
彼は今年、小学一年生。おれもおやじ一年生。
よ-し! おれも「もう少し」「がんばろう」



光り輝く漆黒の馬体、歩くたびに流動するその筋肉は美しい曲線を造りあげる。
そう、彼は競走馬である。
生まれながら走り続けて今日まで20戦0勝、そして引退。好成績を残せないサラブレッドの結末は悲惨なものである。彼もその一頭となる。
彼には妹がいて、彼女も競走馬として走っていた。くしくも20戦0勝、兄と同じ数字で引退することになった。
しかし彼女はその血(血統)が高く評価され、繁殖牝馬として命をつなぐことができた。そして彼女は一つの新しい命を誕生させた。
その子はやがて競走馬となり、彼女とその兄が歩んだ道に一歩づつ脚を踏み出すことになるだろう。
その風貌は彼女の兄、
そして母の父である”シンザン”にそっくりであった。
さて21世紀、この子は・・・・・・・。



蜃気楼だけで構成された街にいる。名前はまだない。ブロックで言えば、たぶん5-BL recall st. 僕は科学普及虚無会に勤めていて、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの関係について研究している。今日も一階までしかないビルのオフィスでタイプライターを見つめている。

昨日から 他部署で開発している、
ドラえもん初号機が、マクロ・ウィルスによって冒されてしまったとの報告を受ける。

わたしはどうしていいのかわからずに - 、
とりあえず、丸くて赤いポッチをひっぱってみる。。

チュドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンボガガガガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。


わたしは今日も科学普及虚無会に勤めている。
さかきばらいくえ とわたなべトオルの関係について研究していて、ドラミちゃんプロトタイプの実験にもたずさわっている。

丸いものは恐いから、リボンをつけてみた。



寒い凍りそうな空を風船が舞い上がる。
突然連絡が取れなくなって、どの位たったかな。
空を見て、世界中が繋がっていて、どこかの空の下で君は何をして何を見ているのか。携帯は切れたまま。解約はされてないみたいだけど。
とっくに人のものだし、今更かかわってもなにもない。ただ、繋がりが切れるのは少し寂しかった。
私に残された時間が僅かだから切ないのかもしれない。
だめでもともとと思い、メールを送った。「私を忘れてしまうかな?覚えててくれるなら返事を下さい。」
−数日後、会社宛に手紙が届いた。差出人は無くとも多分そうだ。
急いで封を切る。ドキドキしながら、次の瞬間笑ってしまった。
真っ白の便箋に筆で大きく◎が書いてあった。
私には十分で、涙が止まらなかった。



 とにかくしゃぼん玉をじょうずに吹くおんなで、見舞いに来た姉妹など目に入らぬ様子で玉虫色の球体を宙に転がし続ける。鬼火のようなその玉で満たされる病室。おんなのところまであと数歩だがその間に浮かぶ無数のしゃぼん玉に姉妹は立ちすくむ。姉はおんなの痩せた横顔を視線でなぞっていたが妹の震える手が背中に触るとはっと顎をあげておかあさん、と慣れぬ形に唇を動かした。するとおんなはしゃぼん玉を吹く手を止めて、あたしの喉の骨まるいんよ、だからまあるく吹けるんよ、それは初めて聞いたおんなの声だった。その夜おんなは死んだ。
 おんなの死体は巧妙に隠され、姉妹は夜毎おんなとの邂逅を繰り返す。添い寝をしておんなの喉をさする妹。姉は喉にナイフを突き立てる振り。ここに丸い骨が隠されている。父に聞いても本を調べてもそれが本当のことかはっきりしなかったが、それこそおんなの喉が特別な証だと姉妹は思っている。やがて朝を告げる鳥が鳴く。
 家路を急ぐ姉妹の喉を何か丸いものが下っていく感触。どちらもそれを自分だけの秘密にしようと考えている。だが満月の代わりにしゃぼん玉が浮かんでいることは、どちらもまだ気がつけずにいる。



 子どもの頃、近所に小さな駄菓子屋があった。学校が終わってから小銭を握りしめて走っていくぼくたちの目当ては、店のおっちゃん手作りのスピードくじだった。10円玉をおっちゃんに手渡して、店先の白い四角い箱の中に手を突っ込むと、小さな三角折りの簡素なくじが出てくる。端っこをとめてあるテープをそうっと破いて、どきどきしながら開けてみるのだが、たいがい中は真っ白で、四角い紙にマジックで大きく丸が書いてあるという「当たりくじ」は出てこない。おっちゃんはいつも笑顔で飴玉やらガムやらを握らせてくれた。何度も何度もチャレンジしたが、「当たりくじ」を見たことはない。だから、「当たったら賞品は超合金らしい」という噂の真偽を確かめることはできなかった。
 ぼくたちは超合金の夢に負けて、とうとう偽物の「当たりくじ」を自作した。すり替えの練習も何度も何度もした。親に見つかるといけないので、ぼくはそれを「書きかた」のノートにはさんで持ち歩いた。けれども結局お店に持っていくことはできなかった。そんなぼくたちの「偽当たりくじ」は、ぼくの机の引き出し奥に、幼い夢を抱えたまま、実は今でも出番を待っている。



「丸○」から僕はこう想像してしまう。
柔らかい曲線、そしてすべるような肌
近づくとストロベリーの香りが僕を悩殺する。
思わず近づきすぎて頬に触れた柔らかいもち肌、
「ゴクリッ」口の中に溜まる唾液を飲み込む。
ああ〜っ、もう我慢できない
君が悪いんだ、
僕を誘惑するから、
この興奮はもう押さえきれない、
おお〜っ、
「いただきまーす。」・・・・・・。
はぁ〜っ、
「おいしかった。」
「このイチゴ大福。」
あなたは何を想像しましたか。



「私、先日、丸の内線の電車内で、
 頭が丸坊主の、丸々と太った男の子が、
 持っていた『正露丸』を丸飲みして、
 目を丸くしているのを見ました。」
「それがどうした。」



右腕に確かに滴る生ぬるい感触だけが僕の感覚を支配する中、たとえそれが天文学数分の一の確率としても時として形而上的にそのような姿をとることが現実にあり得るということを証明する光景が、微かに鉄の臭いを漂わせながら一滴一滴滴りおちるその感触の支配から僕を解き放った。その開放の中で右脳は視覚より舞い込んだ図形にある答えを導き出した。人の「縁」が幾何学的に表せられる「円」であると。人の他人への関心(時として愛情)を直径とし、その力学的反作用が直径に加わる応力となる(時として憎悪)。それが物理的安定をもとめた結果のとして円をとる。それが縁。逆に考えると縁を関心で割ることで憎悪が求められる。その憎悪はいくら計算しても割り切れない超越数。まさにきりがない。だから人は仕方なしに近似値という形で折り合いを求めようとするのだ。

折り合いがつかなければ、そう、
それが全てとは言わないが、僕の眼下に描かれた現実と同じくしてその公式を具現化するのだろう。
血飛沫を正円状に広げた中でその愛情の直径を示すようによこたわる彼女のように。



これ食べてお茶飲も!



今日、俺は会社の上司に叱られた。
長々と説教たれやがって、「くそっバカヤロー死ね○×部長!」と、
車を運転しながら大声で文句をいっている。”ブッブーーッ”
「チンタラ運転してんじゃねーバーカっ」前で安全運転する中年女性に怒鳴りつける。益々イライラしてくる。
信号が赤になり車を停止させる。
いつもより長く感じる赤信号に、ハンドルを指が叩く。隣に止まった車はアベックが仲良く会話している。頭も耳も沸騰寸前に赤く熱くなってくる。
もう爆発っ大声で「バカヤロー」と吐き出しそうな瞬間、ふと前をジャージ姿の少年が通りすぎた。
少年の口から繰り返し吐き出される白い息が
周りの気温の低さを感じさせる。
その時、何故か昔の自分を思い出した。
そして、なつかしいメロディがラジオから耳に流れ込んできた。
それは昔の彼女が好きだった曲だった。
「今、どうしてるかなあ、子供も産んで立派に母親やってるんだろうなあ」
物思いに獲りつかれながら空を見ていたら、月が見えた。
”なんてきれいなんだ”
今まで月を見てそんなこと思ったこともなかったのに、
不思議とそんなすみきった夜空に光る月に感動していた。
「俺も少しは成長したのかなあ」
信号が青に変わり僕は車をゆっくり発信させた。



 それでは丸を描いてください。
 大衆の視線を浴び、ステージに上がる。沈黙。足が震えて、前に進めない。ようやく、巨大なホワイトボードの前に立つ。
 ペンのふたを外して、中心あたりから始めよう。とん、とペンを置くと、場内から軽い嘲笑。心臓がどきどきして、頭は真っ白。時計回りか、その逆か、一瞬迷った後、逆時計回りで描き始めた。せせら笑いとざわめき。やはり時計回りにするべきだったのか。
 全身が震え、丸はどんどんゆがんだ形になっていく。野次が飛ぶ。涙がこぼれそうになる。
 少なくとも、終点と始点をぴたりと一致させなければ。だが、手が思うように動かない。始点のわずか下方に、終点。不完全な丸。場内は罵声の渦。わたしはがっくりとうなだれた。
 なぜこんな目に遭うのか。わたしがよそ者だからなのか。
 野次の嵐の中、呆然としてステージを降りる。また次の被害者が呼ばれる。
 それでは丸を描いてください。



円周率=3.1415926535 8979323846 2643383279 5028841971 6939937510 5820974944 5923078164 0628620899 8628034825 3421170679 8214808651 3282306647 0938446095 5058223172 5359408128 4811174502 8410270193 8521105559 6446229489 5493038196 4428810975 6659334461 2847564823 3786783165 2712019091 4564856692 3460348610 4543266482 1339360726 0249141273 7245870066 0631558817 4881520920 9628292540 9171536436 7892590360 0113305305 4882046652 1384146951 9415116094 3305727036 5759591953 0921861173 8193261179 3105118548 0744623799 6274956735 1885752724 8912279381 8301194912..........



猫の目を見つめている。時刻は深夜1時だ。北京からのメールを読んでいる私は、列車に乗り遅れた夢を見る。シベリア鉄道は北朝鮮の森の中を進む。思想だかイデオロギーだかが同じ現象を違う言語で文化にする。わたしにとって言語は時間との戦いだ。北京、上海、南京、キリスト、同一化の枝葉は分岐するカンガルーのごとく夜空に軌跡を描く。猫の目は鋭利な刃物のように僕を見つめている。万里の長城は衛星軌道から文化大革命を見つめ、故宮の歴史はアイルランドよりも遠いサハラの砂漠に揺曳する。黄金時代、と猫が言った。揚子江でライオンの沐浴を食料にする夫人の後姿が悲しそうだった。I like old familiar melody .全ては変化し、死に至っている。マングローブの根元から腐敗がはじまり人類最後の聖戦がはじまった。死した猫は満月を見つめていた。僕はその死体を避けながら、リハビリテイトする病人のかたわらに流れる河に祈りを捧げていた。水は澱みなく、再生と希望の象徴とも言える裂目から、ぽっかりと大きな穴を開けていた。腕をさしこむと婿しさを憂で。たいて家来を穴なき大とり闊歩、らか目裂るえ家もと微笑の暴気と制裁、くなみ澱は済み。たいてげ捧をり祈に河るれ流にらわたかの人・・マジック・マッシュルームを逆立ちさせて、神田川は流れ続けている。馬の鬣は・・