1st Match / 君の隣には |
> 「この人が私の彼氏だよ」 |
> 窓を締め切っていても雨の匂いは部屋の中にまで忍び込んでくる。 |
2nd Match / 絶対解 | |
> 娘たちはみな裸で、左右どちらかの小陰唇に焼き鏝で数字を刻まれている。窓のな
> 江戸城の中庭にて忍装束に身を包み、構える者二人あり。闇夜黒装束の中で、眼 |
3rd Match / 虹の歩幅 |
> ふらついた犬が村なかを歩く。よくよく見れば、右手左脚を出すとき、また、左手 |
> この円い遠浅の入江に棲む七色のアメフラシは、雨が上がるとその体内に光が点り、 |
4th Match / 壊れたメトロノーム |
> 放課後の誰もいない音楽室が好きだった。 |
> しゃべりたかった。だけどしゃべらなければよかった。いつも言葉は思いには届か |
5th Match / 赤い箱 |
> すべて、止まれ。に染まる世界を、カレーのにおい背に駆けていく。長い長いしっ |
> 針金の上での直立に似た不安定な眠りのなか、あなたは何かが喉をせりあがってく |
6th Match / ひからびさん |
> ピンクひからびさんのカップにお湯を注いで三分。自分で蓋を押し上げ「御用ですか |
> 投薬ミスで大変だったそうよ。そんなふうに呼んじゃ悪いわ。そう203号室のオ |
7th Match / あふれる |
> どっくんどっくん、吹き出る沸き出す艶やかな色。幾筋もの流れをつくる。次から次 |
> 容量を越えて満ち、こぼれること。「風呂はアヒルさんで──れていた」「遊び心に |
8th Match / ナマコ式 |
> 博士博士どこに行ったんですか、と探す彼はまもなく腰を抜かすことになるのだっ |
> 七夕にナマコは月を目指す。 |
9th Match / 文鳥のこころ |
> 五歳上の従兄は、縁側に置かれた籠の中の文鳥ばかり気にしている。何が楽しいの |
> 彼の脳裏に幸せだった日々が蘇る。 |
10th Match / バニシングモーテル |
> 宵闇の二番星に牽かれ、沿道の標識に目もくれず、二人はただカーステレオに身を |
> 車もなかったのに、一度そういうところに泊まったことがある。 |
11th Match / 泳ぐ空 |
> 天女が花を投げる。馥郁たる花散る午後、まだら雲の西へ流れるを見て諍う二人が |
> こんにちは。おまわりさん。駐車違反はしてないので、僕は悪びれず声をかける。 |