超短篇・500文字の心臓

作品募集2020年08月31日更新)

第178回タイトル競作『パステルカラーの神様』投稿方法

募集締切:2020年09月13日(日)



集計結果(2020年8月18日更新)

第177回タイトル競作『川を下る』集計結果

作品一覧



作品発表(2020年08月09日更新)

第177回タイトル競作『川を下る』作品一覧

選評締切:2020年月08月09日(日) →選評掲示板





タイトル競作 正選王受賞作品

 川を下る10 作者:脳内亭

 三途の川を、渡らずに下る。渡し賃は必要であるが下り賃は要らないから。
 延々とつづく賽の河原を横目にそれでも延々と下る。船頭は呆れてとっくにいない。
 舟は勝手に進んでくれるのでよっこらせと横になる。
 どこまでいっても同じ空だ。
「旦那、旦那」
 うつらうつらとしていたところに声をかけられる。見回してみるがだれもいない。はて。
「下です下。旦那の目の前」
 まさかとおもったがどうやら声の主はこの舟であるらしい。
「アタシねえ、うんざりしてたんですよ。あんなケチな渡し舟のまま終わるなんざまっぴらごめん、いつか抜け出したいってね。ありがとうございます。旦那のおかげです。大体あんなねえ──」
 舟はなかなかにお喋りである。
「この川はどこまでつづいてるんだい」
「おかしなことを訊ねなさる。川の行き着く先は海だと相場が決まってまさあ。いやあ嬉しいねえ、憧れの大海原に出られるたあ。このさい改宗して方舟になろうかしら」
 そして延々とつづく舟のお喋りに付き合っているうち、ついに黒々とした水平線が近づいてきた。
「あれが冥海です。時に旦那」
「なんだ」
「泳げます?」
「あの津波のことか」
 舟はサーフボードに変形しはじめた。



タイトル競作 逆選王受賞作品

 川を下る14 作者:空虹桜

「いつか書きたいと思ってたネタなんですけど」
「とりあえず聞きましょう」
「ウチの田舎に約80kmの川があるんです。人工の」
「人工?」
「正式には『北海幹線用水路』っていうんですけど、自然流下で灌漑用水を石狩平野に流してる」
「へぇ。それで?
 なにを書くんです?」
「地の話を。北海頭首工にある北海水神宮から焼山水路橋にペンケ水路橋、光珠内調整池や市来知幹線を経由し、夕張川揚水と合流して、終点の農業用水路に接続されるまでを」
「誰が読むんですか?」
「ですよねぇ・・・『川の名前』や『サマーバケーションEP』には長すぎるし。『鉄塔 武蔵野線』ならいけるかな?
 でも、川の周りには文明があって、ミシシッピ川筆頭に音楽があるんです。『神田川』じゃないけど、たとえば三笠通るから『北海盆踊り』とか、ウチの田舎だったら『火噸節』とか」
「マイナ過ぎですよ」
「でも、地の音楽を誰かがちゃんと綴らないと」
「それは文化人類学とかの領分じゃ無いですか?」
「売り上げだけだったら『遠野物語』は同人誌ですよから」
「だいぶ上からですね」
「物書き名乗ってるんだから、恥ずかしげなんかとっくに捨ててます」