超短篇・500文字の心臓

作品募集(2018年09月16日更新)

第165回タイトル競作『エとセとラ』投稿方法

募集締切:2018年09月30日(日)



集計結果(2018年09月04日更新)

第164回タイトル競作『明日の猫へ』集計結果

作品一覧



作品発表(2018年08月14日更新)

第164回タイトル競作『明日の猫へ』作品一覧

選評締切:2018年月08月26日(日) →選評掲示板





タイトル競作 正選王受賞作品

 明日の猫へ10 作者:磯村咲

父が遺した家で伯父が遺した猫と暮らしてきた。

伯父の死去を連絡してきた弁護士から1通の指示書を受け取った。同時に相続人はあなた1人なので従おうと従うまいと遺産はあなたのものですとも言われた。
指示は猫の餌やりに関するものだった。
9つある洋間のうち8部屋が対象である。毎晩ランダムにひと部屋を選び餌と水を置く。猫が餌を食べようと食べまいと翌朝には片付ける。餌の種類は問わない。
それだけだった。
伯父が亡くなってからの数日は弁護士が代行したそうだ。そうした依頼なので。それ以上の説明はなかった。

伯父の意図は分からないもののなんだか面白くて餌やりを続けていた。4次元に属すると思われる猫と交流する感情が芽生えつつあったここにきてカザフスタンへ転勤が決まった。
家は貸すか売るか不動産屋に相談中だが猫は連れて行きたい。通常のペットと違い検疫など必要ないがそれでもいきなり外国の見知らぬ部屋に餌を食べにくるものだろうか。
今更ながらに伯父はどんな気持ちで指示書を作ったのか考えている。猫は家につくと言う。新しい住人に指示書を託す方がよいのか決めかねている。



タイトル競作 逆選王受賞作品

 明日の猫へ15 作者:麻埒コウ

 明日とは、過去だ。
 果てしなき時の果てから回想される記憶の断片だ。
 観測される総てのデータをアーカイブすることで、汎ゆる時間は過去の総体となる。

 黒猫が言った。
「not私有財産! 細胞マルキスト!」
 白猫が言った。
「もっとしようか死姦! 解剖マゾヒスト!」

 赤猫が言った。
「音楽っていうのは、時に刻む数式なんだよ」
 青猫が言った。
「じゃあ、数式は時に刻まれる音楽なの?」

 銀猫が言った。
「三千世界の主を殺し、鴉と添寝がしてみたい」

 緑猫が言った。
「毛をむしった裸の姿でも愛してくれるよ。ねえ、きっと……」

 黄猫が言った。
「一人で笑うよりは、二人で泣いたほうがいいでしょう」

 アオザイを着た鼠が集まってくる。九匹の鼠が手を上げる。
 灰猫が言った。
「三匹!」
 七匹の鼠が手を上げる。
 灰猫が言った。
「二十六匹!」


 因果は循環する。
 猫が原因となって引き起こした結果は、結果が引き起こした原因という猫になる。

 猫模様の模様の模様。
 猫関係の関係の関係。
 猫観察の観察の観察。
 猫原理の原理の原理。

 因果は循環する。
 模様は循環し、関係は循環し、観察は循環し、原理は循環する。
 明日が、過去になる。