超短篇・500文字の心臓

集計結果(2018年02月15日更新)

第160回タイトル競作『タルタルソース』集計結果

作品一覧



作品発表(2018年01月22日更新)

第160回タイトル競作『タルタルソース』作品一覧

選評締切:2018年月02月04日(日) →選評掲示板



作品募集(2018年01月05日更新)

第160回タイトル競作『タルタルソース』投稿方法

募集締切:2018年01月14日(日)





タイトル競作 正選王受賞作品

 タルタルソース15 作者:氷砂糖

 少しだけおしゃれ。新しいニット。流行りのグレンチェックパンツは、今日着たら通学用にしようと思う。どのイヤリングを合わせようかとか、コートはこれでいいかなとか、お化粧も派手すぎないくらいに。まるでデートみたい。
 一人で来るのが夢だった洋食店。ちょっと背伸び。
「お待たせ致しました」
 目の前にお皿が置かれ、思わずスマートフォンを手に取ろうとして我に返る。そういうことをしに来たんじゃない。そういうことは似つかわしくない。
 ナイフを入れるとサクッと心地良い音がして、きつね色の厚すぎない衣の中にエビ。
 これは全部わたしのもの。この時間もわたしだけのもの。たらふく味わっていいんだ。このミックスフライセットも、これを食べる時間も。
 ナイフでタルタルソースを掬う。ゆで卵が入っていなくてラッキョウが入っているのが特徴らしい。たっぷりと擦り付ける。ほおばる。ほら、素晴らしくおいしい。さっくりした衣とぷりぷりのエビがもちろんおいしい。けれどソースがそれを引き立てる。
 一人の時間はみじん切りの自由。きっと人生はエビフライを楽しむようなこと。大人の女性になりたくて。おいしいことたくさん、夢だらけの大人に。



タイトル競作 正選王受賞作品

 タルタルソース16 作者:海音寺ジョー

 タルタル島のタルタル人は世界中から愛されている。それは相槌を打つのが無双に上手だからだ。
「そうっすねー」
「そうっすかっ?」
「そうっすよねー!」
 実に的確に絶妙のタイミングで実感込めて打ってくれる。ほんとにほんとに、自分の話を聴いてくれるのは嬉しいものだ。
 相槌を打つ時の、たるっとした笑顔も魅力。



タイトル競作 逆選王受賞作品

 タルタルソース8 作者:雪雪

文明の爛熟期においても、味をレコードすることはできなかった。サーモンは滅び、サーモンの味は復活していない。
不満足な昼食の後、研究室に戻ると机の上に調味料の瓶が立っていた。ラベルにマジックで「電報」と書いてある。かわいい字だ。
謎かけが好きな復活技師の娘から、次に誰をやるかの報せだろう。

前回ガロアをやった間宮はエルデシュを。宝井とカシュカナンは協力して、津々見が前回失敗したウィトゲンシュタインを。津々見はリベルタリアのキャプテン・ミッションをやると報告を受けていた。
瓶で報告してきた樽田は、前々回私を復活させた当人である。謎はすぐに解けた。彼か。私と噛み合わせようということか。
復活者には母語補正付きで日本語が刷り込まれる。彼と私の間には未決着の問題がいろいろあるけれど日本語で話せば、思わぬ筋道にしけこむこともできよう。

地球上に林檎の虫喰い穴のように残った、かすかな、しかし最大の文明圏である日本に、歴史上の叡智が集められている。集められた側の私が言うのは不遜だが。
ノックの音がした。
樽田は天才だ。仕事が早い。
ノックの音色だけで懐かしい彼の来訪を確信したが声を聞いて確信するのとほぼ同時だった。
「いるのか。ヴォルテール」