1st Match /
右手
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目が覚める。朝になっている。起き上がり、顔を洗う。歯を磨く。食事の支度をする。 |
雪の降る町で僕らは、失った右手を捜して歩き続けている。無表情の交通標識にも、疲れきったあばら屋にも雪は降り積もっているというのに、失くした右手はどこにも見つからない。プラモデルめいた笑みを雪に溶かして、彼女が「保護色だから見つからないのかな」と呟く。雪に覆い隠されて僕でない僕に成り下がった僕はそれでも「運が悪いだけさ」とせいっぱい強がる。その隙に、彼女はほとんど雪に消えている。まだ、歩き続けている。いくら考えてみても、彼女の顔を思い出せなくなる。自分が何を探していたのかも、わからなくなっている。ふと雪の中から、右手が顔を出すのだが、僕はそれを放り投げてしまう。雪の降る町で僕は、失った彼女を捜して歩き続けている。 |
2nd Match /
雪の降る町で僕らは
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雪の降る町で僕らは互いを追跡していた |
雪の降る町で僕らは、手を繋ぐ。僕らは同じものを探しているので。握った手の上に、熱い雪が降りかかる。僕らは手を繋いだまま同じものを探している。 |
3rd Match /
感情嫌い
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姑が病死する。嫁はほくそ笑む。中学生の娘は妊娠する。夫の愛人が発覚する・・・ |
うるさいんですよ。いい加減にさせましょうよ。ここをどこだと思っているのでしょうか。開いた単行本が進みません。公共の場はあなたがたの王国ではありません。走り回って脳天から金切り声出している子鬼を微笑ましく見ていないで黙らせていただけませんか責任者の方。 |
4th Match /
A DAY IN THE LIFE
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ある日、目が覚めるとヒラメの縁側だった。なぜ解ったのかと言えば、彼らの話が聞こえたからだ。 |
「今日もまた、無意味に過ごしてしまったか。」 |