Final Match /
飛ぶに飛べない鳥の歌
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体、とろーんとしていくのがわかるのよ。あなたの息が唇が指が、好き。あなたの声が、好き。あなたの体温が、好きなの。 |
歌を忘れたカナリアは月夜の夜に皮引き千切られる。 彼女は、忘れた歌を必死に探している。歌うこと、うたう歌、どこかに落として探している。歌を探すことが自分を探すことになっている。本当は誰一人として彼女を探してはいない。既に終わっている。 しかし彼女は探し続ける。歌を、自分を。気付いているが探し続ける。それが生きる理由になる。 相変わらず、綺麗に微笑む。邪気なく笑う。 「先生、落ちてないの。どこに落としたのかしら」 悲しそうに僕に問う。 「焦らずじっくりね。僕も気を付けておくから。」 この白い箱の中で永遠に繰り返される。 けれど、ここにいる間だけ、彼女は花のように笑える。 この鳥篭の中では傷つける刺激はない。 ある筈のない歌を探し、自分を探し、心を閉ざす。 狂気には至らない彼女の最期の選択。 僕はただ、傍にいるしか出来ない。 |