1st Match /
土を運ぶ
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おまえは大きくなりすぎたんだよ。たいていもっと小さいうちに捨てるんだ。そんなものかって? そんなものだよ。やめなよ。ちくちくと痛いよ。おまえのあたまに植えた松だよ。根引きの松だったか、大きくなったものだね。わたしがいつか登りたいと言ったら、おまえも登ると言って笑ったね。いや、なつかしい。だが行こうじゃないか。おまえは大きくなりすぎたんだよ。 |
ギンギラギンと太陽が、照り付けるから母さんが |
2nd Match /
祈り
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涙が流れているとそれだけで胸がぎゅってなって哀しいのかそうじゃないのかよく判らんくなってしまう。涙が止らんくなってもうどれくらい経ったろう。ただ、ずっと胸がぎゅっとなってる。目は冷やすと気持ち良い。 |
数多の人がミネギシズムに泣かされている。今もなお。 |
3rd Match /
空から降りてくるもの
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「荒れ地」に派遣されてからどれぐらいになるのか、もう忘れた。見張り続けるのがわたしの仕事だ。朝、日が昇ってから、夜、日が沈むまで。テントに帰って薄いスープをすする。カンテラの灯の下で、ペンを走らせる。目撃物なし。目撃物なし。目撃物なし。 |
景色は続いているけど見えない壁が立ちはだかっている場所が僕の町にはあって、つまりそこが世界の果てなんだけど、その透明な壁に破ったノートをのりで貼りつけたら見えない段ができた。ずらして貼れば空へ続く階段ができあがる。 |
4th Match /
罪の甘み
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あれほど優しい人と言われてきたお兄様が歯を剥いて私を打ち据えるほど変わられても、私は何を責めることも致しません。 |
こんがりと焼けたローストビーフを切りながら、私は彼の胸板を思い出していた。服の上からでもはっきりとわかる、彼のあの引き締まった胸板を。それは鋼のように硬くもあり、ムチのようにしなやかでもあり…… |
5th Match /
ブルー
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宇宙の濃い闇黒に光を入れて、と――――――――ってもたくさんの空気で薄めて |
少女は道の果てに座り込んで虚ろな目をひらく。 |