1st Match /
カメラオブスキュラ
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こっちの世界は |
草原に少年はうつむいて立っている。かれの父は架空 |
2nd Match /
桃色小道
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たぬきがたらいの舟でやってきた。ぽんぽこ腹鼓を鳴らすのでしかたなく一杯振る舞うと、またぽんぽこ。花の下で杯を交わしていると、夕風が出てきた。 |
他に適当な言葉がみつからないので「花びら」と呼ぶが宙を飛び交うそれらは色を持たずに数を増しつつ吹き荒れる。その中を歩いている私は、どうも花びらが増えるたびに考える力を失っているようだ。この花びらはどこから来て、どこへ向かうものか。思考をめぐらすたび花びらは増え、私はぼうっと立ち止まる。 |
3rd Match /
まひるの神様
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太陽が照り刺すその下で子供は煤煙を生きる。汚れた手で盗み、物乞いをする。家はなく、体中が煤け、虚ろな目をしている。仕事をしても得られる金額は物乞いと同じ。 |
うだるような暑さでハイになった僕たちは、汗だくのシャツで、坂道を転がるように駆け下りたり、ぶつかりあったり、意味なく大声を出しては壊れたように笑ってた。 |
4th Match /
喜劇王
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吾、人生なかばにして迷い、道化師の仮面をかぶりて門をくぐる。門の上には看板が立つ。汝らここに入るものいっさいの望みを棄てよ。そうして吾は盲となり、吾が王国からも追われ、家族らとも引き裂かれる。 |
ガラクタを蓑虫のように纏って、彼はあらわれる。引きずるような足取り。客席はざわめく。いつもと違う反応に一瞬彼は顔を上げ、そしてまた何もなかったように歩き出す。ようやく舞台の中央。彼はずっこけてみる。がくっ。力なくよれよれと。変わらぬざわめき。パントマイムをする。重いステップ。ぎしぎしと軋む屑鉄。一呼吸おきながら、短いコントを繋いでいく。そのたびにガラガラと鳴る不用品。誰も、何も言わない。笑い声も聞こえない。 |