500文字の心臓

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短さは蝶だ。短さは未来だ。

 かわき、ざわめき、まがまがし 作者:空虹桜

「今夜も『the 和 make it』! お相手はトニーと」
「アンナです。ねぇトニー。今日はどうmake itするの?」
「真窯菓子の『茶碗蒸し』で、和のPUDDINGをmake itだ」
「WAO!」
「まずは下拵えだ。材料・分量はこの通り。まず、鶏肉を小さめに切ったら、さっと熱湯をかけ、塩ひとつまみを揉み込んでくれ」
「OK。トニー。Sweetsなのにお肉を入れるのね」
「これぞ、fantastic和!他にも、椎茸と百合根、三つ葉を切って、海老を塩茹でする」
「『百合根』ってcuteね」
「THE和って感じだね。OK。次に、アンナは卵を溶いてくれ」
「どれぐらい溶けばいいの?」
「日本人の肌色ぐらいかな。ハハハ。僕は窯の火を熾して水を過沸きさせるよ。そして、冷ました出汁に醤油と塩を溶かして混ぜるんだ」
「トニー、もう疲れた。これぐらいでどう?」
「GOOD! じゃあ、僕は調味した出汁とあわせて一度漉す。アンナは茶碗に下拵えした具を盛ってくれ」
「宝物を埋めるみたい!」
「漉した卵液をそっと注いで蒸すんだけど、残念。実食は明日にお預けだ。SEE YOU!」



 P 作者:瀬川潮♭

 夜空の星が全て落ちてきた。
「実は宇宙は一つの大きな果樹園ですから」
 天文台に問い合わせると職員はそう答えた。いまひとつ納得できなかったけど落ちてきた赤い星を一つ手にすることができたので納得しておくことにする。
 それをかじると、瞬間的な華やかさが口に広がった。のち、寂しく衰退していく感覚。自然に涙が落ちるような、不思議な味だった。あるいは、慣れ親しんだ味なのかもしれない。
 一方、実の落ちる季節の終わった夜空には新たな星たちが輝くようになっていた。いずれも星一つの形がPの字。だと思う。自信がないのは星が大きかったり小さかったりするから。Cの字だと視力検査ができそう。
「だからといって、太陽はじっくり見ないでくださいね」
 問い合わせた天文台職員の言葉。
 はっと気付いて見上げた東の山から昇った太陽は、Pだった。
 まったく見たことのない光景。
 新しい朝だ。
 どこか心の弾む新しいPちにちが、始まる。