言葉は真似し難い
いまさらながらなのだが、小林秀雄の『考えるヒント』(文春文庫、1974年)を読んでいる。いろいろと考えさせられるところが多い。「人形」の段なんてこのまま超短編だと思う。書くこと、読むこと、思索すること、などなどについて示唆に富んでいるので、未読の方は読まれることを強くおすすめする。
そのなかで、わたしが気に入った言葉をひとつ引用する。「言葉」の段より、宣長の言葉を引いて曰く、「言葉は真似し難いが、意味は真似し易い」。宣長の言は「歌」を念頭においたものだし、小林の論考も当然「歌」をそのベースにしている。けれども、わたしは、なんとこの言辞の超短編に沿うことよ、と思う。
物語は語り尽くされている。けれども新しい物語はつねにつくられ続ける。そこに介在する「言葉」の力に、わたしたちはもっと意識的であってもいい。
次回は言葉のマジシャン、タカスギシンタロ選でにぎにぎしくまいりましょう。さらなる投稿をお待ちしております。
ヘリウムサイクル : 天原
> ひさびさに自転車で出かけようと思ったら、
車輪とヘリウムだけを使ったとても単純なお話だが、ユーモラスに仕上がっているのは、「ヘリウム」「ヘリウム」という繰り返しと、最後の文章によるところが大きい。
message in a bottle : 峯岸
> 波打ち際に空の酒瓶が落ちていたので自分の未来を
ありがちな話なのだけれども、短い言葉でうまくまとめている。ラストがきいていてわたしは好きです。
9月9日 雨のちはれ
にじをモチーフに、ファンタジックな世界を平易な言葉で描くさまがとてもいい。それぞれの色を使ったエピソードも楽しい。残念ながら、最終段のお母さんとの会話が余計。前半部分だけで充分に物語として完結していると思う。
失うもの
うなぎと暴力とをモチーフに、「失うもの」を描こうとする試みだが、残念ながらうまくつながっていないように思われる。「うなぎ」「暴力」「失うもの」がそれぞれ単独で描かれてしまっているのでは。物語はそれが程よくからまったところに発生する。
幾何学的恋愛
そこまで楽しく読ませておきながら「大嫌い」で終わるのは個人的に納得できません。(笑)