500文字の心臓

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短さは蝶だ。短さは未来だ。

超短編文様

 最近「文様」の本をよく読みます。そして文様ってすごいなあ、超短編だなあって思います。たとえばよく見かけるツバキの文様(資生堂のマークなんかもそうですね)。吉田光邦さんの『植物とデザイン』(八坂書房)や『日本美の研究』(NHKブックス)によると、古来よりツバキは呪力をもった植物とされてきたそうです。日本書紀では天皇の土蜘蛛征伐に威力あるツバキの木槌が使われましたし、また、日本の人魚伝説である若狭の「八百比丘尼」が手にもつ花もツバキでした。「若狭」の地名にもあるように、人魚の肉を食べて八百歳の長寿を得た八百比丘尼の、ツバキはその若さの象徴でもあったわけです。資生堂のマークがツバキであるのは、なんとなくきれいだからというわけではなく、大いに意味があるということです。簡略化されたデザインの背景にさまざまな物語を秘めた文様ってすごいなあ、超短編だなあと思います。

 さて、今回の自由題にもたくさんの投稿をいただきました。掲載作こそ少なめですが、全体のレベルはなかなか高くて読みごたえがありました。で、なんで掲載作が少なくなったかというと、ちょっとした不満として、奇妙なデキゴトを描写しただけの作品が多かったように思います。もちろんそういう作品も立派に超短編なのですが、やはりわかりやすい「表の物語」があった上で、その「裏」に、何事か尋常ならざるものが出入りしているようなお話に、ぼくは魅かれるのです。あまり頭でっかちにならずに、もうちょっと自然に、みじかく、作品を見直していただければ、もっともっと掲載作は増えたのではないかと思います。
 さて、次回の選者は「プチブル」から「プチ」がとれそうなブル・みねぎし氏です。たくさんのご応募をお待ちしております。

選者:タカスギシンタロ 



掲載作品への評

G : 脳内亭

>  何とはなしに本を開いて、追うのは仰々しく陰気な言葉ばかり

正面の視線と後ろからの視線。縦のバンドエイドと横のバンドエイド。ひざを抱えた姿勢と寝転がった姿勢。さまざまなベクトルが交差して、さりげないココロの動きを立体的



あおぞらとけむり : 秋山勇人

> ある晴れた日の正午、鉄筋屋の息子が、鉄筋の雨に降られて死んだ。

「コ」の字が効いている。コの字の硬質な角っこでなにかを叩いているような感じが、独特のアクセントとなっています。二ヶ所、誤字脱字と思われるところを修正しました。問題がある場合は管理者にご連絡ください。



夏の思い出に : きき

> 目が覚めると、ベランダの向こうの空がずい分白かった。

超常的作品があふれる中で、かえって目立った作品。この作品のように自然であたたかなエッセイっぽい超短編も、もっと書かれて良いと思います。



掲載されていない作品への評

埋み火

今回一番回数を読んだ作品。それだけ力を秘めた作品なのかも知れませんが、ちょっと読み切れなかった。



コップの嵐

目を引くイメージですが、嵐としてはもうひと暴れ必要か。



キノコのいたずら

タルホっぽさからもうひとはみ出しほしい。



みずうみ

後半部のみだったら掲載だったかも。