輾転反側 作者:スナフキン
僕がころころと転がると、隣の男も転がってきた。
邪魔だな、と押してやると、邪魔をするなと怒られる。
頭にきて男に背をむけると、どすんとぶつかってくる。
まさに輾転反側。すっかり眠れなくなる。
何をしてるんだっ、と怒鳴りつけたら、星を見ているなどと宣ふ。
ほうき星を探してるらしい。
恋の願い 作者:瀬川潮
星空をかすめ、流れ星きらり。
男、「あ!」。
女、「……うん」。
座る二人、ただ寄り添うのみ。
二人の手にはいつの間にか、ソーダ。
グラスひとつに、ストローふたつ。
交差させ、見つめあい、ちゅう。
氷、カラリ。泡立つ炭酸の中、流れ星きらり。
男、「あ!」。
女、「……うん」。
寄り添う二人、覗き込む。
額をぶつけ、微笑んで、ちゅう。
目を開ける。ホタルが一斉に空高く舞った。
かなた夜空に、流れ星きらり……。
銀河鉄道 作者:春名トモコ
恋人の部屋のベランダで、夜に沈んだ街を眺めていた。ドミノのように並んだ市営住宅。駅に向かって伸びている商店街のアーケード。住宅街の信号は黄色でゆっくり点滅している。
大きな動きのない景色の中、寝静まった街を切り裂くように、光の窓だけ浮かび上がった電車が走っていった。規則正しく並んだ四角い光の連なり。
駅を通り過ぎて、電車の先頭がふっと浮いた。そのまま夜空へ、まっすぐのぼっていく。中天に浮かぶ満月に向かって電車は走り、とうとう見えなくなった。
「ねえ、いま電車が」
室内でテレビを見ている恋人に急いで話すと、年上の彼女は興奮している僕を不思議そうに見て言った。
「最終のあとの回送電車は、月へ行くものでしょう。じゃないと駅員さんが帰れないじゃない」
「……そうなの?」
僕は窓から見える月をもう一度見上げる。
恋人は相変わらずテレビを見つづけている。