500文字の心臓

トップ > タイトル競作 > 正選王・逆選王 > 2019年度逆選王作品一覧


短さは蝶だ。短さは未来だ。

 おしゃべりな靴 作者:海音寺ジョー

上流からまた草履が流れてきた。弟がベイトリールを巧みに操ってスピナーで引っ掛けて回収する。上流に遊泳場があって、子供が油断して流してしまうのだ。色とりどりのビニール靴。ミュール。浮き輪。弟はきりがないなーという顔になってきた。魚籠の中は空。足元にはカラフルな漂着物。高価そうな靴もあった。
「エスパドリューだな」
「兄ちゃんは物知りだな」
 スニーカーも流れてきた。
「靴屋が開けそうだな」
ぼくが軽口をたたくと、弟が面白がってそのスニーカーもルアーで引っ掛けて岸に戻した。
「でも全部片方しかねえよ」
「そうな。でも水木しげるの妖怪図鑑に出てきた、一本足の妖怪には売れるかもよ」
「はは、あの妖怪、何てったっけな?」
「何か良い名前が付いてたけど、ぱっと思い出せないな」

 妖怪の名を無心に検証してると、まだ竿にぶら下がってるスニーカーが「カカカカッ」と高笑いした。二人びっくりしてると、スニーカーの中からビョッと見事な大きさの鮎が跳ねた。



 さかもりあがり 作者:脳内亭

 酒盛りがあり、加賀森ありさ盛り上がり、差か、リカーも下がり、有賀もサカり「ガリもさ、アリか」理も裏か、朝が。さ、狩りもアガリ。



 忘れられた言葉 作者:まつじ

,“,,,.、,,,.、^”.“...’...’・_._._.
。。…、..。..。
/:/..、/:/..。”‘“_,_._-・’_,_._-・’
^”.“...’...’・言葉/:/..、/:/..。”‘“
”‘“:....。
”‘“:....。
/:/..、/:/..。”‘“_,_._-・’_,_._-・’
。。…、..。..。
,“,,,.、,,,.、^”.“...’...’・_._._.
”‘“:....。
_,_._-・’言_,_._-・’
葉”‘“:....。

”‘“:
,“,,,.、,,,.、^”.“...’...’・_._.



 ハンギングチェア 作者:深夜真世

 ここに一基のタイムマシンがある。
 形状は半密閉式の卵型の形状で吊られていないハンギングチェアといった具合でありなぜそうしているかというと搭乗者の過去のわだかまりというか心のひっかかりをよりどころにして宙に浮き揺れることで催眠状態にするからであるつまりタイムマシンとは言葉の綾で実際は洗脳マシンだったわけで発明者及び開発者は詐欺だの開発費泥棒だの糾弾されいずれも不幸な末路をたどることになった。それでも歴史は常に未来により上塗りされる運命で重力を無視して浮遊する機能がエアカーに応用されることになり技術革新の礎となったが同時に運転免許取得には自損事故つまり浮遊状態からの制御不能落下を防ぐためより明確で強烈な心のひっかかりを持つ必要があることから初恋は一度限りの殺しのライセンスとして認められ一種の儀式となってしまう。
 つまり、浮かれた社会が多くの浮かばれない人により成り立っているのはいまも昔も変わらない。



 ツナ缶 作者:胡乱舍猫支店

ードアを閉めて溜息。
サバ缶が流行りだって。ふつーにスーパーとかで売ってるだけじゃ無くて高級食材店やデパートなんかでも色々凝ったヤツを売っているらしい(どう言うモノかはこれから検索)。そう言う事になっていると知ったのはついさっきだけど、そもそも何だって流行りなワケさ?何で缶詰なんて保存食(つか非常食…どうしても横でローソクが燈ってる状況しか思い浮かばない)をありがたがるのかさっぱりわからない。でもたとえそう思ったとしてもキミが欲しいと言ったら買わなきゃいけなくなるワケで。まあその辺はね…。

ードアの前で溜息。
流行りってことは売れるよね?そう売り切れなのよどこもかしこも。だからおんなじ魚の缶詰繋がりで許して。これだと4個パックで安売りしてたし…うーん困った、良い言い訳が思いつかない…うーん。
ードアを開ける。
キミが倒れてて床が…。
おわぁぁ…とっ…とりあえず買えなかった言い訳はしなくて良くな…いや、こ…困った。このまま見なかった…ってのはダメ…だよねぇ?
ああそれにゴメンね、つい思い出しちゃった。ほら、ミラノで一緒に食べたパスタ。トマトが良く合ってたねぇ、ツ…。